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水盤のばら

リルケ


水盤のばら
 
ライナー・マリーア・リルケ(1875―1926)

音もないいのち、はてしなく咲き続くこと、
あたりの物たちが狭くする空間からは、
少しの余地も奪わずに、空間を使うこと、
蔵われたもののように、ほとんど輪郭をもたず、
内部だけでできたもの、
はなはだ奇異な繊細なもの、
そしてみずからの光にみちたもの、――ふちまで光にみちたもの。
これに似たものを何かわれわれは知っていようか?

そしてまたこのようなこと、花びらと花びらがふれあうために、ある感情がうまれることを?

見よ恍惚としてひらくあの白ばらを、
それが、貝がらのなかにまっすぐに立つヴィーナスのように、

ばらたちにとって成れないものがあろうか。うつろにひらかれているあの黄のばらは、

そしてどのばらも、結局は自分だけを内におさめているのではないか?
自分を内に持つということが、外の世界を、
そして風や雨、春の忍耐づよさ、
負い目と不安、仮装した運命、
夕べの大地の暗さ、
曇の変幻と逃亡とほのかな兆し、

さらには、はるかな星の漠とした影響にいたるまでを
ひとにぎりの内部に変えてしまうことを指すのであれば。

いまひらかれたばらのなかに、その内部はうれいもなくよこたわっている。
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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 小説・文学

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