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少年時代の終わり(和田忠彦 訳)

モンターレ

  少年時代の終わり(和田忠彦 訳)

 モンターレ(1896―1981)

 道は未知の貌をした不安な歴史に通じていた。
けれど その貌を養う韻律は
ぼくらから逃げ去った。
あらゆる瞬間が燃え尽きた
未来の一瞬に、跡形もなく。
生きることは、ときには新しすぎる
運命だった。だから心が高鳴った
規則などなかった。
定められた溝など、
悲しみと喜びを識別するための対照などなかった。
けれど きみはまた小径を引き返し
海辺の家へと
ぼくらの驚きに満ちた子供のころの、今では閉ざされた隠れ家へと
心のどんな動きにもすぐに応えた
外面の一致。名前をまとったものたち。
ぼくらの世界には中心があった。

ぼくらは汚れのない時代にいた
雲が暗号でも略号でもなく
旅を見守る美しい姉妹であるような。
自然のなかに恍惚とした凝視がある
自然は夢見ない驚異だ
曖昧なぼくらの心に追いつこうとは
ぼくらは欺かれた時代にいた。

短い歳月が日のように飛び去って
華やかにむさぼる海はすべて
確信を沈めた。
海はいまでは震える御柳のぼやけた姿をしていた。
夜明は起きなければならなかった
一条の光が輝く
窓辺でひとつぶの水滴のようにぼくらに告げた
ぼくらはしっかりと駈けよって
庭の砂利の上で きしむ
門を開いた。
ぼくらにははっきりわかった、偽りだと。
重苦しい雲が海面で
ぼくらを沸き立たせている 濁った海のうえに
のさばっていた。
嵐の予感が
大気にはあった。
そんな予感も関りがない、
しるしをつけた中庭を
まるで世界のように探検する
子供の領域には!
ぼくらにも探るときがやってきていた。
少年時代はまるく円のなかに消えたのだ。

ああ 葦のしげみの中で人喰い人種ごっこ
棕櫚のひげ、破れたブリキ缶集め、楽しかった。
美しい時代は飛び去った、海の
線のうえを、帆を張りつめてゆく小舟のように。
たしかにぼくらは押し黙ってみつめていた。ささやかな 激しい変化を期待して。
やがて偽りの静けさのなかで
えぐられた水のうえに
風が起きるはずだった

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